スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

県庁おもてなし課

県庁おもてなし課県庁おもてなし課
(2011/03/29)
有川 浩

商品詳細を見る



あらすじは…
地方には、光がある―物語が元気にする、町、人、恋。とある県庁に突如生まれた新部署“おもてなし課”。観光立県を目指すべく、若手職員の掛水は、振興企画の一環として、地元出身の人気作家に観光特使就任を打診するが…。「バカか、あんたらは」。いきなり浴びせかけられる言葉に掛水は思い悩む―いったい何がダメなんだ!?掛水とおもてなし課の、地方活性化にかける苦しくも輝かしい日々が始まった。

みたいな感じです。



うん。やっぱり面白い!!


良いなー。良いなー。ホント素敵な小説を書くよなー。

「恋する観光小説」。このキャッチコピーが凄くしっくり来るんだよなー。

まず観光小説ってだけでも「んん?」ってなるのに、「恋する」なんて枕詞がつけばその話の内容なんて全く想像つかない。

観光小説。こんなジャンル今まであったのかな…?ってな感じのこの作品なんだけど、読めば一目瞭然。これを観光小説と呼ばずして何を呼ぶってな感じまで受ける作品になってる。

そしてこの「恋する」というキャッチフレーズも読めばなるほど納得出来る。

もちろんさっきは「んん?」ってなると言ったけれど、作者が有川浩な訳だからもちろん今までの通り恋愛要素をばっちり含んでくるんだろうな…なんて浅はかな事を予想してたわけですよ。

まあ、完全に裏切られたどね。凄くいい意味で。

そりゃいつものように恋愛要素はしっかりと入っているんだけど、今回に限っては「人と人」の恋が主な要素ではない。

高知県民の高知県に対する恋。

有川浩の高知県に対する恋。

そして、おもてなし課。この素晴らしいメンバーの高知県に対する恋。

こんなスケールが小さいものもあれば、凄くスケールの大きいものまである。

そんな素敵な「恋」がたくさん詰まった素敵な小説がこの作品。



まず『県庁おもてなし課』ってネーミングがホント凄いw。

『フリーター、家を買う』、『植物図鑑』、『三匹のおっさん』だとかもう凄いの生み出してますけどね…。『植物図鑑』なんか本当に作者名あってるのか見返しましたからね。

そんな中でも今作はなかなか…w。

こんな作品名あるのか?w なんて驚いていたらそんな課が本当にあるって言うんだからまたさらに驚き。

その実際にある課をモデルにしているし、この作品に出てくる吉門って作家さんが今まで出てきた有川さんのイメージにしっかり合うもんだから「この作品ってどこからどこまでが事実なんだ!?」と勘ぐってしまう。

そう言った点でも吉門を見ていると有川さんのキャラクターって言うか、性格って言うか、そう言ったものが連想されるんですよね。いや吉門素敵なキャラクターだ。

そして、「お役所仕事」バリバリのおもてなし課のメンバー。特に掛水がまた良い…。

最初は吉門が感じた苛立ちって言うか戸惑いって言うか、それをもの凄く感じてしまうんだよね。

ただ読んでいるだけの読者の俺ですら分かるようなことを全く分からない。想像もつかない。

これが「民間感覚」がないってことなのかな…?なんて思ってしまう。

言い過ぎなのかな?なんて思ってたりもしたけど、最後の対談を見る限りそれもあながち言い過ぎても無いのかもって感じですよね。

ただそんな彼が吉門のアドバイス……って言うかお叱りって言うかw。それを聞き始め、自分でも課の仕事のこと、県のことを考え始めた掛水が格好良くて格好良くて…。

吉門の妬みが本当によく分かるくらい格好良くなるからなこいつ…。

有川さんの作品って最初どんな奴であろうと、最終的には本当にめちゃ格好良くなるからたまらないんだよな…。『フリーター』の誠二しかり掛川しかり。


そんな掛水と多紀の恋愛。そして、吉門と佐和の関係。

こういった点も重きを置いていないとは言え、さすがの有川さん。

キュンキュンならぬギュンギュン来るような恋愛は無い物のクスッとするし、読んでて暖かくなるような恋愛を書ききってくれてます。

有川さんの恋愛って凄く安定感があるんですよね…。それが良いか悪いかってのは言えませんけど、俺は凄く安心します。

ラノベとかのラブコメって大抵がたくさんのヒロインの中から一人を選んだり、選ばなかったりとどっちにしてもモヤモヤする人が出てきたりするんですよねー。あとやっぱり若干不自然ですし。

でも、有川さんの書く恋愛はあくまで1対1しか無いし、その恋愛が凄く自然体って言うかあってもおかしくないような素敵な恋愛なんですよね…。

だからこそ、読んでて凄く暖かくなるし、羨ましくなる。「こんな恋愛してみたい!!」って思わされるんですよね。


今回の掛水と多紀なんてそうですよね。

最初は情けなくて頼りなく、多紀の気持ちに気づかずにいた掛水。

唯一「自分の存在」を必要としてくれた掛水に気持ちを寄せる多紀。

互いに些細なことで妬いたり、ちょっとしたことで喜べたりと何と言うか凄くいい恋愛だなーって感じなんですよね。

例えば「日曜市」に行ったときとかそう。

別にいまさら行こうなんて考えない所も、好きな人と一緒にいる。好きな人と歩いていると考えれば凄く素敵な瞬間になる。

まあ、「日曜市」の持つ元々の面白さと清遠のおっさんが気づかせてくれたってのもあるかも知れませんけど。

でもやっぱりそう言う細かな日常で暖かくさせてくれるってのは大事なことだと思うんですよね…。

掛水にとっての吉門の存在だったり、多紀にとっての佐和だったり。

向こうからすると何てことのない…って言えば語弊があるかも知れないけど、二人にとって互いの存在以上になることはないのに妬いたり、拗ねたりする姿は凄くいじらしいし可愛いですよね…。

だからこそ最後の、

「――もしもし、多紀ちゃん?」

ってこの呼びかけには凄く嬉しくなったな…。

こういった細かな所が有川さんの描く恋愛の素敵な所なんだ…。

あと忘れちゃいけないのが、吉門と佐和。

この二人にはもう最初っから最後までやきもきさせられた…。いやもちろん全く気づかない掛水にもだけどさ…。

複雑な事情があるってのは分かっているんだけど、互いに互いを想い合いながら、それ故に自分の気持ちを伝えることが出来ない。

そんな良くある関係かも知れないけど、それだけで終わってくれないのがこの二人の関係なんだよな…。

いやもうこの二人は幸せになってくれて良かった…。大好きな二人だったからな…。



そしてメインである「おもてなし課」の活躍(?)。

吉門に紹介された清遠のおっさん。この男の出現からおもてなし課の快進撃が始まる…!?

と思いきや、清遠のおっさんには振り回されっぱなし、仕事も上手くいかなかったりと難儀な展開じゃあるけど、そんな中で一歩一歩しっかりと階段を昇っていくように成長する掛水と「おもてなし課」。この様子が見ていて本当に頼もしかった。

しかも、それだけじゃなくてこの作品で出てくるプロデュースやら着眼点とかも凄く納得出来るし、共感できる。

トイレの話なんて、男だけどよく分かるしね。

美味い物をたらふく食って出すために入ったトイレが汚かったら凄く嫌な気分になるしね。

実際、今年の春行った鹿児島のホテルじゃ新しくはないけど、しっかりと掃除が行き届いてて凄く気持ちが良かった。

あとは料理も地元の物をふんだんに使っていたしね。やっぱり心には残った。

「高知県まるごとレジャー化」とかパッと出されてもその全容なんて全く想像できないようなプランを持って来る清遠もそうだけど、その清遠の「もの凄い」企画に負け無いよう――清遠に負け無いように、頑張る面々を見ているとやっぱり凄く格好いいんだよな。

やっぱり一生懸命な姿ってのは誰であろうが凄く格好良く見える物なんだと思う。いや実際格好いいけど。

彼らの一生懸命が創り出した結果は本当に素敵な物になったし…。



何と言うか、最近の有川さんは広い層が楽しめる作品を書いてますよねー。それを凄く感じます。

特にこの作品なんてそう。

話の中にもありましたが、観光業に関わってたり、観光を推進したりする立場にある役所の皆さんなどが読んでも楽しめる作品だと思うんですよね。いや想像でしかないですが。

あとは購買層らしい若い女性もしっかりと恋愛要素が入っていますから楽しめるでしょうし、観光小説として、高知を楽しむ作品としても楽しむことが出来る。実際、これ読んでいたらめちゃくちゃ高知行きたくなりますしね…いやマジで。

何と言うか、昔の作品は恋愛要素やファンタジー要素が結構強くて幅広い年齢層に読まれるってのは難しかったと思うんですよね。

それに引き替え、今回の作品や『フリーター、家を買う』、『三匹のおっさん』など恋愛要素をちょっとしたアクセントにして面白い設定や背景などを巧く使って楽しめる作品ってのは若い層だけじゃなくてたくさんの人が楽しめると思うんですよ。

実際母親に『シアター!』読ませてみたんですが(そこまで昔じゃないですけど)、あの年齢になると恋愛とかに面白さを感じないみたいなんですよね。そうかと思えば『阪急電車』みたいに「恋愛」では無く小説としての面白さに重きを置いている作品はめちゃくちゃ面白いって言ってましたし。まあ、その時も恋愛には全く反応してなかったんですけどね…。あの人もおばさんですね…。

とまあ、ホント多岐にわたりますよね有川さんの創作アイデアは。

彼女の作品に触れる度に今までと違った面白さを感じることが出来るってのは本当に素晴らしいことだと思います。


いやー。ホント色んな点で素敵な作品だったなー。

やっぱり有川さんの作品は大好きだ。もう惚れても良いくらい。

最後の作品内での掛水と吉門の対談とか、小説としてもまた一つ違った工夫が感じられたし。

今月は図書館戦争の文庫版出るし、有川月間になってまうかも。

望む所やー!!!


追記:この作品は東日本大震災に寄付されるらしいです。
   詳しいことはこちら→それぞれにできること(随時追記)




人気ブログランキングへ


スポンサーサイト

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

オー!ファーザー

オー!ファーザーオー!ファーザー
(2010/03)
伊坂 幸太郎

商品詳細を見る


あらすじは…
みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。なんたって我が家は、六人家族で大変なんだ。えっ、そんなの珍しくないって? まあ聞いてよ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、飛びっきりアクの強いね。今回も、その一人と一緒に出かけたことから、とんでもない事件に巻き込まれてさ――。

みたいな感じです。


なんか当たり外れなんて考えてる自分が恥ずかしくなった。

これ読んで確信しました。オレは伊坂幸太郎が好きです。


第一期最後の作品と言っているこの作品。

…面白かった。本当に面白かったです。読み始めた最初からもうこの作品の虜でした。

雰囲気で言うと「砂漠」に近い物があるかも知れませんね。

物語の展開と言い、会話調と言い。これが第一期の作品の特徴なのかな?

ただこれ読んで思ったことなんですけど、伊坂幸太郎の作品って総じて映画のような物語なんですよね。

…ちょっと違うかな?難しいな…。

何というか読んでいて脳裏に情景が凄い浮かんでくるんですよね。

だから小説を読んでいるって言うより映画を読んでるって感じを受けるんです。

それが作品を読んでるときのスピード感を生んでるのかな?


そして、彼特有の伏線の使い方ね…。

伏線って言ったら成田良悟ですよ。ええ誰がどう言おうが成田良悟です。

ただ、伊坂幸太郎の伏線の使い方って言うのは彼の物とはまた少し違った感じなんですよね。

成田良悟はどの伏線だって物語に欠かせない物。

そして伊坂幸太郎の場合はアクセントを加えるためであり、読者にクスッとさせたり楽しませたりするための伏線なんですよね。

まあ少し無理矢理な感じは受けましたが十分に楽しめました。こういう伏線も良い物だ…。


また登場人物も素晴らしいんですよね。登場人物だけで言ったら一番好きかも知れません。

登場人物が魅力的なのも「砂漠」に似ているかも。

由起夫がまたね…。嫌みなポテンシャルの持ち主で…w。

成績優秀、スポーツは万能、腕っ節は強い、その上女にはモテる…。

いやどこにそこまでの絵に描いたイケメン主人公がいるんだよ…w。今時ラノベの主人公でもそんなのいませんよ。

なのに全く嫌みを受けない、それどころかムリを感じないんですよね。

何でなんでしょうか?本当に不思議でたまらない。

まあ4人の父親たちの良い所ばかり継いでるってことなんでしょうけどね…w。まあ人間は環境によるって言いますし。


んで、4人の親父たち。こいつらがまた最高で…。

ギャンブル好きの鷹、女たらしの葵、大学教授の悟に、熱血体育教師の勲。

その一人一人が本当に素晴らしい…。いや本当に。

特に鷹と葵でしょうね…。って言うか葵のキャラの立ち方はハンパじゃないw。

こういう父親も悪くないって思ってしまいますよね。いや実際いると凄い困ると思いますけど。

ただこの4人の父親たちの息子・由起夫に対する愛情は本当に凄かったです。

結局誰が本当の親父かなんて関係ないんですよね。4人全員が父親なんですよ。

この作品の本当の面白さはそこにあると思いますね。

由起夫の父親たちに対する対応。これもまたリアルでね…。そのリアルな感じの中にチラと見える父親たちに対する信頼と親愛が凄く『家族』を感じさせる。


そして、彼につきまとうヒロイン(?)多恵子。

彼女がまた面白い…。何というか本当にこういう女子高生いそうだな…って。いるのかな…?

殿様やら鱒二も良い奴…では無いかも知れませんけど面白い奴らですしね。

本当に由起夫は良い(?)友人たちを持ってます。

これも親父たちの影響なのかも知れませんね…。

ただ多恵子の元彼の熊本先輩はどうなったんだろう…?


そして由起夫が巻き込まれる大小様々な事件。

そのすべてが繋がっていく様。そして所々に見える頼りになる父親の姿。

本当に読んでいて面白い、楽しい作品でした。

しかし、あの父親たちは本当に理想の『父親』ですよね…。

あくまで4人で一人の『父親』としてですが…w。

友人のように付き合え、頼りになる。そして自分を形作っているバックボーンでもある存在。

もし彼らが一人一人だったらちょっとどうなんだって父親でしょうしね…w。

…いや本当に誰か一人だけでもろくな父親にならない気がw。

もしかしてそれを分かっていて母・知代はこういう状況に持って行ったんじゃ…?恐ろしい女ですね…w。

ただ実際すごいお母さんですよね。

こういう感じでコメディな感じに仕上がってますが、もし一歩間違えていればそんな物じゃ済まなかったわけで。普通だったら修羅場になってますよね…?

なのにこんな素晴らしい『家族』を作り上げ、最後のあの場面だけで凄い人だ…と思わせてしまうんですよね。

母は強し…。


そして最後のあの場面。あれがこの作品のすべてですよね。

彼女がもう一度言う。「元気? わたしの大事な夫たちは」
そんなの知らねえよ、と由起夫は答えた。





人気ブログランキングへ


↑伊坂幸太郎凄いな…

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

天地明察

天地明察天地明察
(2009/12/01)
冲方 丁

商品詳細を見る


やっと借りられた本屋大賞第1位。
長かった…w。


あらすじは…
江戸、四代将軍家綱の御代。戦国期の流血と混迷が未だ大きな傷として記憶されているこの時代に、ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること。武家と公家、士と農、そして天と地を強靱な絆で結ぶこの計画は、そのまま文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれながら安穏の日々に倦み、和算に生き甲斐を見いだすこの青年に時の老中・酒井雅楽頭が目をつけた。「お主、退屈でない勝負が望みか?」日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描いた新境地。時代小説家・冲方 丁誕生の凱歌がここに上がる!

みたいな感じです。



からん、ころん。

この音が出てくる度に何度涙ぐんだことか…。


本当に…。本当に素敵で最高に面白かった…。

時代小説というのは知っていましたが、まさか算術家、碁打ち、そして暦学者の物語だとは思いませんでした。

元ライトノベル作家ということもあったのでてっきり戦国の世を舞台にした太平ロマンだとばかり…。

徳川幕府が発足し世は次第に太平の世へと変化しつつある世の中。

そんな世の中で幕府と朝廷、暦、そして天地へと勝負を挑んだ一人の『士』の物語。


これはもう最高でした…。

470ページという大きな1冊のハードカバーの中に渋川春海という一人の男の一生が詰まっている。

そのたった一人の男の人生に何度興奮させられ、涙ぐまされたことか…。

読んでいる最中、そして読み終わった今何度も思ったこと。


日本人にも凄い奴はいたいんだ…。


中学、高校と様々な科目で外国の様々な人物が歴史的に偉大な功績を残して来たことを学びました。

その度に思う事がやはり日本人は世界の歴史には残らないんだなってこと。

でもこの本を読んでその思いが変わりました。

世界が知らなくても自分たち日本人が知っていればいいじゃないか。と。


もうたまらなかった…。史実ってこれほどまでに面白いのかと。

いやもちろん書くに当たって色々と変更を加えたり脚色を加えているってのは分かるけどこんなドラマチックな真実が今まで習ってきた歴史の中に隠されていたんだってのを考えるとたまらない。

よく考えてみると歴史は好きだけど大まかな流れよりも授業の中では語られない歴史上の人物たちの人生の方が好きなんだよ。

そんな人にとってはたまらない1冊。



たいていの人なら毎日目にする暦。学生の身では避けて通ることは出来ない教科数学。そして将棋と並び日本の代表的な遊技、碁。

そんな三つの一見共通性が見あたらない事柄の、だけど密接に通じているものの三人の天才の物語。


碁打ちであり算術家でもある渋川春海。

碁に対しても優れた才能を持ちながら碁に「飽き」を感じ、算術の魅力に惹かれてしまう一人の天才。

そんな彼の人柄がまた凄い…!

ぼんやりとした性格で笑われることはあっても嘲笑われることは決して無いような素敵な人物。

だけど一度自分ののめり込んだこととなると決して止まることはない。

この彼の人柄が完全に物語にグッと引き込ませるんです。

だからこそ彼の周りには優れた人物たちが引き寄せられ、もの凄い人物たちからも期待が寄せられる。


そんな彼とは対称的に姿をほとんど見せることはなく天から与えられた優れた才の為に孤独に学道を突き進み和算と言う日本の優れた数学大系を創り出した天才・関孝和。

そして日本の碁を近代囲碁を作り上げた史上最強の棋士とも称される本因坊道策。

この二人の天才もまたこの作品において大きな役割を果たし、彼の『暦』を作り上げると言う史上まれに見る大仕事を前にした春海を奮起させた人物たちです。

彼らの存在が無ければ春海の仕事は達成できなかった。そう言っても過言ではないはずです。

そんな彼らにとって春海という男は圧倒的な才を持ち、孤独に頂点に立つ彼らにとっては自分と肩を並べてくるかも知れない。そんな楽しみを抱かせた人物。

だからこそ関は彼の病題を前に笑みを浮かべ算術におけるライバルの出現を喜び、道策は怒りを持って彼が碁に打ち込まないことを糾弾した。

そんな彼らの直向きさ、一つの事柄に対する実直さに勇気を貰い、春海は素晴らしい成果を上げることが出来た。


そして、彼にとって大切な人たちの死。

その死一つ一つが大きな意味を持ち、彼の想いを支えた。

誰一人として行ったことを無駄には出来ない。

誰一人としてかけることがあれば成功は為し得なかった。

もしかするとそんな彼らもまたこの物語の主人公だったのかも知れません。



ほとんどが解明され何不自由なく暮らすことが出来るこの世の中。

それに比べ何が正しくて、何が間違っているかが分からずこの小さく大きな日本しか知らない世の中。

どちらが良いのか?と言われると悩んでしまいます…。

この本を読み知的好奇心を刺激され、「オレもこの時代に生まれたいたなら…!!」と考えた人はたくさんいるはず。

様々な本を読んできましたがこんな好奇心を刺激され、学ぶと言う事にこれほどまで熱くさせられた物語無いです。

暦。こんな非常に身近で毎日目にする物がこんな経緯で作られた…。そして代数という何も考えず使っている物もこんな天才によって作られたんだ…。

それを考えると何もかも解明された世の中にどれだけ自分が知らないことが潜んでいるのかと言う事が浮き彫りになりますよね…。


この本のおかげで自分が知らないことがまだまだ溢れているんだってことが良く分かりました。



『天地明察』。

明察という算術における“正解”表し、「はっきりと真相や事態を見抜くこと」を意味する言葉。

天地明察というこのタイトルはこの作品を著すに相応しいです。

先ほども言ったようにこの作品は時代小説でありながら斬った張ったの侍の物語や人情溢れる江戸の人々の物語でもない。

孤独ではなく、多くの人に愛され支えられ、暦を変えるという大仕事をやりとげた天才の物語です。

ただ一つ言えることは斬った張ったの剣豪小説で無く、人情溢れる市井小説では無いけれど、『刀』と脇に天地に真剣勝負を挑み、人情溢れる素敵な人物たちの大仕事を描いたこの物語は時代小説として最高の物であるはず。


世の中の事柄を『明察』することが出来たならどれだけ最高なんだろう…?

そんなことをつい考えてしまうこの作品。

映画化も決まっているらしいですからね…。いや今から楽しみだ。

一度読んだ作品ではありますが文庫化されたらきっと買います。確実に買います。

冲方さん。素敵な作品ありがとうございました。





人気ブログランキングへ

実は冲方作品初めてだったり…w

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

神様のカルテ

神様のカルテ神様のカルテ
(2009/08/27)
夏川 草介

商品詳細を見る


本屋大賞2位の作品です。

やっと読むことが出来た…。図書館の予約が異常に多いんですよ…w。


あらすじは…
栗原一止は信州の小さな病院で働く、悲しむことが苦手な内科医である。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を三日取れないのも日常茶飯事だ。経験豊富な看護師と、変わり者だが優秀な外科医の友人と助け合いながら、日々の診療をなんとかこなしている。
そんな栗原に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。
悩む一止の背を押してくれたのは、死を目前に控えた高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。

みたいな感じです。


これは面白い…。

ああ…。これなら本屋大賞2位もうなずける…。

本当に。本当に『優しい』物語。


いや…。これ今までの本屋大賞には無い作品じゃないですか?

何というかこの作品はじわりじわりと面白さが染み込んでいくというか…。そんな印象を受けます。

今までのはガッと来るような作品が多かった気がするので。

凄く良い作品ですよ。

地方医療の現場って言う凄くシリアスで厳しい現実を描きながら、登場人物たちの『優しさ』によって紡ぎ出される『優しい』そして『美しい』物語。

その登場人物。

まず主人公の栗原一止。

もう主人公が凄いですよね…。本当に変で『優しい』人物です。

語り口調も完全に大昔の小説の登場人物。それもそのはず夏目漱石の『草枕』なる作品を愛読書とする超変人なもので。

ただ口調は変、行動は変でも心根だけは真っ直ぐで凄く『優しい』お医者さん。

何というか…。まさに「お医者さん」って感じの人物です。

そして『細君』のハル。栗原榛名。

彼女が…。可愛い…。可愛すぎる…。

「イチさん」と呼びかける時の笑顔が頭の中ではっきりと思い浮かぶんですよね…。

ああ…。ヤバイ…。こんな夫婦になりたい…。


まあ、物語は短編のような感じなので一話一話書いていきます。


第一話 満天の星
もうこの冒頭1ページで完全にやられましたね…。これはもう最高としか言いようがない…。

いや正直言ってこういう堅苦しい話し方する主人公の物語って基本的に好きじゃ無いんですが、これは別。もう本当に素晴らしいと思いますね。

意味もなく堅苦しくしてるのではなく、すべて主人公の『優しさ』を出すためのものですからね…。いや素晴らしい。

まあ、物語としては登場人物のキャラ紹介って所ですかね。

しかし、誰も彼もが素敵ですよね…。いやもうたまらないね…。

粗暴な怪獣外科医の砂山次郎にベテラン看護士東西。

そして御嶽荘の変な住人たち「男爵」に「学士殿」。

良いな…。オレこの人たち大好きだ…。

最後のハルはもう…。いやマジで素晴らしかった…。

「おかえりなさい!そして、ただいまです。イチさん」

これにやられた…。もうどうしようもないよ…。

「一年に一度くらい、こうして散歩できる日がつくれるとよいですね」

……。


第二話 門出の桜
これで完全にこの物語が好きになりました…。

最後の『桜』と雪のシーンは本当に美しかった…。

何というかこれを読んでいると頭の中に情景がはっきりと浮かんでくるんですよね。

それもこの作者の力なのかな?

でもデビュー作ですよねこれ?その上現役医師でしょ?天才じゃないのか…。

男の友情って感じですよね…。泥臭いのに美しい…。本当に良い友人たちですよね…。

そして、一止のこの言葉。

「学問を行うのに必要なのは、気概であって学歴ではない」

この言葉から始まる一連の「励ましの言葉」。これを読んだときこいつが大好きになりました…。なんかこればっかりだな…w。

ただ本当にその通りですよね。

学歴があったって気概がなければ『学問』は行えない。学歴が無くても気概さえあれば自ずと結果は着いてくる。

……。小説を読んでいてここまで心に残る言葉に会ったことない気がする。

何か自分のことを言われているようで…。

「学士殿」は立派な学士殿になれるさ…。


第三話 月下の雪
この話でこの作品が大好きになった…。

この作品のメインと言っていい話。まあ、最後だからそれもそうでしょうが。

ただこれは凄かった…。

安曇さんの『優しさ』、一止の『優しさ』、ハルの『優しさ』。その他みんなの『優しさ』。それがすべて合わさって出来た作品だとこの話を読んで実感しました…。

そして「お医者さん」のあるべき姿ってのを感じましたね…。

なんか色々と感じる物がある作品なんだよな…。ホント…。

大学病院で「たくさん」の人を救うための医療か、地方病院で「限られた」人を『救う』ための医療か。

どちらが良いのか…。それは誰にも分からないですよね…。

でも一止は後者を選んだ。

それは正解じゃ無いかも知れない。でも、「間違い」じゃないんですよね…。

ただ『優しい』だけじゃここまで心に残らないでしょうね…。

面白いだけじゃない。『優しい』だけじゃない。厳しい現実もある。それでもみんな強く、『優しく』生きている。

だからこそ「良い」作品なんだと思いますね。


もうはっきり言います。これ大好きです。

次が待ちきれないよ…。あと65人もいるんだよな…。いやどうしようもないよ…。

しょうがない。ゆっくり待つか。

これ多分文庫化したら買いますね。いや絶対買いますね。

そのままやったら短いからもう一話くらい入れてくれないかな?

そして映画。映画ですよ映画。

絶対見に行きますね。宮崎あおい大好きの奴と行きます。

ただどっちもイマイチしっくり来ないんだよな…。

ハルは分からないも無いですが。って言うかこうして見るとあんなのが似合う女優が見あたらない。

まあ、宮崎あおいが一番近いかな?

櫻井翔ですよ問題は。全くしっくり来ない。

まあ、一止が合いそうな俳優もいませんけどね。

あの二人なら大丈夫なんじゃないですかね?

個人的には東西さんが気になるんですが…。って言うか東西さん絶対に報われない恋だよな…w。

東西さん好きなんですけどね。


まあ何にせよ本当に良い作品ですよ。

アニメだって出来そうですし、ドラマもいけるでしょ?

同じ医者が書いた医者の作品って言ったら「チーム・バチスタ」がありますが全然こっちの方が好きです。って言うか大好きです。

早く次読みたい…。




人気ブログランキングへ


↑彼らみたいな夫婦になりたい…

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

終わる世界のアルバム

終わる世界のアルバム終わる世界のアルバム
(2010/10)
杉井 光

商品詳細を見る


やっと読めた…。


あらすじは…
なんの前触れもなく人間が消滅し、その痕跡も、周囲の人々の記憶からも消え去ってしまう現象が頻発している世界。そこでは、いつの間にかクラスメイトが減っていき、葬式や遺書は存在せず、ビートルズが二人しかいないのが当たり前だった。そんな世界でぼくは例外的に消えた人間の記憶を保持することができた。そしてぼくは気がつく。人が消えていくばかりの世界の中、いなかったはずの女の子がいつのまにかクラスの一員として溶け込んでいることに―。

みたいな感じです。


ああ…。こんな作品なのか…。

色々な所で感想を読んではいたけど…。きついな…。

「終わる世界のアルバム」。

タイトルをここまではっきりと感じながら読むのは珍しいな…。

本当に凄い作品を杉井さんは書いてくれた…。

表紙からしてそうだけど、物語全体を通して儚くて、淡くて、綺麗。

そんなイメージがつきまとう作品。


今までにない作品だなってのは思ったな…。

終わる世界。まさにそんな世界に生きる人々。

消えていくって言ったら有川浩の「塩の街」を思い出すけど、これはそんな物じゃ無いからな…。

あれとは違って、消えた事すら覚えてない。それが良いのかどうかは自分には分かりませんが…。

「塩の街」での人が塩になっていく瞬間。

アレを読んだとき言いようのない苦しさが胸を襲ったけど…。

これは…。

忘れる。忘れるってどうなんだろう…。

楽しかった事も苦しかった事も。愛していた事すらも忘れるってことですよね…。

でも、それを失った苦しさに比べたら忘れた方が良いのか…?

オレには分からないです。


残念ながら神メモしか読んでないので、さよピアについては何も言えないんだけど人の心情描写は相変わらず凄かった…。

その苦しさを忘れる事が出来ず、何故か消えた人間の事を覚えている少年マコト。

彼の自分に平気だと言い聞かせている様子が凄く辛かった…。

本人は「言い聞かせている」なんて思いもしなかったんでしょうが…。

だからこそ莉子は彼の様子のおかしさに気づいていたんだろうけどね…。

そんな彼女だからこそ、

「なんで?あ、あたし、なんにも、泣くことなんて、ないのに、なんで」

この場面が凄く痛かった…。


そして、奈月。彼女の登場がすべてを変えた…。

ある朝。一つだけ増えていた教室の席。

そこから始まるボーイ・ミーツ・ガール。

アレなんだよな…。

杉井さんって今までにない作品を書いていながら基本的な、もっと言えば王道的な展開を完璧に素晴らしく書いてくるからどうしても惹かれずにはいられない…。

その上の最初から張り巡らされた伏線。これがジワジワと効いてくる…。

個人的には一枚一枚と開いていくCDが凄い印象的だった。

どうも、その開いていく瞬間が彼らの別れの近づきを表しているようで…。

だからこそ、最後のあのシーンが凄く悲しく、彼らの今までがフラッシュバックした…。


本当に人と人との関係や心情が上手い…。

近いのに遠い。そんな主人公の淡泊でそれでも優しい性格を凄い表す一人称でしたね。

しかも、無駄なことを一切書かず登場人物たちだけを書いた。その描き方がまた憎い…。

どうして人がいきなり消えるのか?これから先どうなるのか?

そんな普通だったら気になる事を一切書かない。

この物語の淡さを上手く出している…。

結構そう言う事は気になる性質なんですが、今回に限っては全く気にならなかった…。

って言うかそれを気にさせない何かがこの作品にはあったな…。


本当に素敵な作品を読んだ。そんな気分です。

ラストシーンを読んだとき哀しいのに清々しい。

自分でもどうしてそんな感情が生まれてきたのか分からない。

そんな今まで感じた事のない気持ちを感じさせてくれました。




人気ブログランキングへ


↑次はさよならピアノソナタかな

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。