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サクラコ・アトミカ

サクラコ・アトミカ (星海社FICTIONS イ 1-1)サクラコ・アトミカ (星海社FICTIONS イ 1-1)
(2011/04/15)
犬村 小六、片山 若子 他

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あらすじは…
畸形都市・丁都に囚われた美貌の姫君、サクラコ。
七つの都市国家を焼き払う原子の矢は、彼女の“ありえない美しさ”から創られる……!
期待の新星・犬村小六が放つ、星海社SFの新たな代・表・作。

みたいな感じです。



恋する一人の怪物と“世界を滅ぼす美しさ”を持った一人の姫君。

そんな二人のボーイ・ミーツ・ガール作品。


こんな作品を持って来るか犬村小六…。

何と言うか、犬村さんの代表作である飛空士シリーズとはまた違った…というか作者を知らずに読まされると本当に同じ作者が書いた物なんだろうか?と不思議になるほど毛色の違った作品。

雰囲気というか、物語の特性上、紅玉さんの『ミミズクと夜の王』と似た空気を感じたな…。

「星海社FICTIONS」の美麗な装丁と質感。

そのすべてをフルに利用して作り上げられた一作の「おとぎばなし」。

それがこの作品なんだと思う。



史上最低最悪超変態野郎ディドル・オルガによって考えつかれた一つの最悪の兵器『原子塔』。

これに必要な物はただ一つ―いやただ一人だけ。

“ありえない美貌”を持つ姫君・サクラコ。

世界中のすべての男性を(文字通りの意味で)虜にしてしまう美貌を持つ彼女。

その量子学的にありえない美貌を持つ彼女は自らを直接目にした物は、誰しもが彼女に畏敬の念を露わにするか、一人の人間から一匹の雄へと変えてしまう。一人の例外を除いて。

その例外が姫君と恋に落ち、史上最低最悪の魔女を敵に回した一人の怪物・ナギ。

この二人の出会いから、世界を滅ぼし救う、史上最高に醜く美しい物語は始まる。


最初読んでいるときは設定としては面白いんだけど、いまいちストレート過ぎる話だなぁって印象だった。

わがままだけど最悪の未来が待っている一人の少女とその少女を監視するためだけに配置された一人の怪物。

さすが犬村さんと思わせる設定じゃあるんだけど、あまりに在り来たりな感じでどうなんだろう?って思いながら読んでいたんですよね。

それがいつの間にか。それこそ本当に気づかないうちに物語の中に惹きつけられていく。と言うより完全に物語の中に入ってしまう。

この辺もこの作品が「おとぎばなし」のような作品だと感じる要因の一つかも…?

そして、物語の骨格も「悪い魔法使いの元から、美しい姫を一人の怪物が救い出す」というとても「おとぎばなし」のようなシンプルな作品。

だからこそ、凄く読みやすいし、何か読んでいて懐かしい気分になる。

そんな作品だから、むしろそのストレートな作風って言うか展開が凄くよく生きているって感じがあるんだよなぁ。


そして、中盤で披露される仕掛けのためにもうページを捲る手が止まらなくなる。

これは本当にずるい…。

ぼんやりとしていた作品の空気が一気にギュッと収縮されていく。

このことでサクラコとナギの悲恋がまたさらに悲劇性が増していって、彼らの苦しむ姿を見たくないのに続きが読みたくてたまらないと言う矛盾した気持ちが自分の中で暴れ回ってるのがよく分かるんだ…。

それまで散々いちゃつき、幸せな様子を見せつけてくれていた彼女たちを見ていたものだからまたさらにそれが辛いんですよね…。

そして、幾百の砲弾が身体を貫き、爆炎に内側を焼かれながらそれでもなお死ぬことが出来ないナギの姿が…。

「身を焦がすような恋」って言う物を初めて目の当たりにした気がする…。

傷つけられながら、死ぬような目にあっても死ぬことが出来ない。

だけれども、彼女のために彼は歩き続ける。戦い続ける。

一つの約束を守るために。


そんな彼らの最後。

これがまた素敵だった…。本当に…。

とても綺麗で醜いこの作品にとって最も相応しい最高のラストだったように思う。

「互いを想う恋の気持ち」。これが世界を救い、彼らを救った。

この作品の中じゃ、何がどうなってどういう仕組みでこの兵器が動き、この戦争が動いているのか。それが全く分からない。

だけれども、この作品ではむしろその方が自然に思える。

恋が世界を救う。

在り来たりで今や陳腐になってしまったこの言葉だけれど、この言葉ほどこの作品にぴったり合って、素敵に感じられる言葉は無いと思う。



飛空士シリーズとは違った雰囲気はあるけれど、素敵な恋の物語は相変わらずだったな…。

この作品はシリーズにならないみたい―シリーズにしようが無いし、なって欲しくないけど、これから先犬村さんがどんな作品を書いてくれるのか?それもまた楽しみ。




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テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

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